運動が苦手な馬もいる
ようやく秋らしくなり、乗馬日和が続いています。
ウマコたちも暑さから解放されて、元気に走り回っています。
ただ一頭をのぞいで。
軽快に野原を駆ける馬、競馬で勇猛な姿で疾走する馬、仲間とじゃれ合いながら走り回る馬……。
馬は走るのが好き、というのはもしかしたら人間の勝手な思い込みかもしれません。
そもそも草食動物なので「走る=危険なとき」なのでは。
ただ、数日雨が続いたときや大雪が降り牧場にも雪が積もったときなど、我が家のウマコたちにとってもテンションの上がる瞬間があるようで、そんなときは嬉々とした様子で走り出し、ときには後ろ足を蹴り上げておならをしながら追いかけっこをしたり、牧場中を大運動会することもあります。
ビバとシルにいたっては、スライディングストップを織り交ぜながら大爆走。
つられたビッグも二頭の後ろからかけっこをし、器用に短い後ろ足を蹴り上げるなど、馬体の大きさにかかわらず、馬の走る姿はみなかっこいいなあとよく思ったものです。
ところが我が家へハクがやってきてからは少々見方が変わりました。
ハクちゃんは超がつくほど平和主義。
シルやビバ、ビッグがかけっこを始めても、逃げ惑い、走るのも遅いため自分よりも小さなシルにあっという間に追いつかれて蹴り上げられる。
走り方もズベズベとした歩様で、速歩を後ろから見ると側対歩のせいかいわゆる「ぶりっ子走り」にしか見えません。
ときどき対抗して後ろ足を蹴り上げるのですが、自分の頭部よりも高く足を蹴り上げるビバとシルと違い、地面からわずかに足が上がるだけ。
ハクちゃんは平和主義なだけではなく、どうやら運動が苦手な馬だったようです。
5歳で我が家へ来たのですが、当初よりよくつまづいていました。
もしかしたら足が悪いのかと調べましたがそうでもなく。
ただただ、きちんと足を上げて歩いていないのでちょっとした凹凸にもつまづいたようです。
ほかにも足は真っ直ぐ顔は左向きというおかしなクセがあるため、ハクちゃんを乗りこなすにはテクニックが必要で、素直で敏感に反応するビバと比べると実は上級者向きのウマコなのです。
そんな運動が苦手なハクちゃんなので、シルの調馬索運動が始まると、次は自分の番ではないかとドキドキするようで、スタコラと木陰に隠れてジッと様子を伺っています。
ただ、自分の体の大きさを把握していないため、隠れていると思っているのは本人(馬)だけなのでした。