馬の甘え方と対処法
ここ一年、シーちゃんのつきまといが激しくなりました。
厩舎で掃除を始めれば、行く先々についてきて、ホウキをはく腕にあごを乗せてくる。
牧場にいれば、体の中に入ってしまいそうなくらいの勢いで突進してきて離れず、顔をなめてくる。
そのたびに「邪魔だね」と言いながらハグしています。
はい。
嬉しいのです。とてつもなく嬉しいのです。
もともとこんな時期でなくても、人とソーシャルディスタンスを取りがちなわたし。
人に甘えるのは得意じゃないし、甘えられるとどう対応していていいのかとまどう。
コミュニケーションがド下手なため、実はシルのこの過剰なスキンシップに最初はとてもとまどいました。
だってどうしたらいいのかわからないのです。
嬉しさを噛み締めながら、無言で受け流していました。
でも今は、朝の超絶忙しい時間帯でも、ボスにバレないように、つきまとうシルと朝のあいさつを繰り返して遊んでいます。
具体的にいうと、腕にのせてきた顔をハグしてたてがみにそってモミモミ。
からの、口横の「プレイボタン」と呼ばれる「遊ぼう!」のスイッチを優しくナデナデカキカキ。
からの、そっと顔横を押して場所を譲らせて、すばやく掃除。
その後はそれらの繰り返し。
でも、実は馬はそんなにハグは好きじゃないと思います。
それよりも、首筋をなでたりたてがみの奥をマッサージしたり、しっぽの付け根をモミモミしたり、耳の穴をかいたり、顔をかいたり……が好きな気がします。
それでもわたしはまずはハグ。
一瞬だけでもハグしてこちらの愛情をギューっと流しこむと、伝わるんじゃないのかなとメルヘンチックに思っているのです。
今のところ、シルもビバもハクも、とくに嫌とは思っていないようなので、大丈夫でしょう。
馬はワンちゃんほどわかりやすい感情表現をすることはないけれども、耳や足、体の向きで気持ちを表現します。
わたしもこの四年間で、かすかな瞳孔の動きや耳の動きでウマコたちの細かな気持ちがだいぶわかるようになりました。
でも朝のシルのつきまといが、果たして単純に甘えているのか、これはシルに聞いてみなければわからない。
ただただわたしのことを「カキカキ棒」と思っているかもしれないし、「美味しいものが出てくるマシーン」と思っているかもしれないし。
それでもいいんです。
あの子たちといることで、人付き合いもなんとなく自然にできるようになったから。
あるがままでいい。そう思えるようになったことだけでもラッキーだと思っています。