馬との会話は成立するのかどうか
牧場の朝は6時から始まります。
とくに週末や連休の朝は大忙し。
朝ごはんをあげてから自分たちのごはんを食べて、お弁当を作ってから馬小屋へ行き、ウマコたちのお手入れをしてから放牧し、馬小屋を掃除する。
遊園地がオープンすると同時に子どもたちが園内を走り回るため、その前までにこれらを済ませます。
今でこそ要領もつかみ、ボスとわたし、それぞれの役割もできてきましたが、オープン当初のわたしはほうきの使い方一つロクにできず、無駄な動きが多い。さらに力もなかったため、ものすごくものすごく掃除に時間がかかりました。
だからボスもわたしも終始無言。口を動かす暇があれば手を動かせといわんばかりに、黙々と作業をしていました。
だから、今にして思えばウマコたちも朝はピリピリしていたかもしれません。
それだからこそ、お休みの日の朝はとても清々しい気持ちで過ごせていたんです。
といってもやる作業はいつも同じ。
ただ違うのは、ウマコたちとたっぷりと話し(ひとり言ですが)をしながら過ごせること。今日の天気のことからごはんのこと、体調のこと、いろんなことをウマコと話せば、一週間の疲れなんかあっという間に取れてしまいます。
言葉がかえってくることなんかもちろんありません。
それでもウマコたちの耳はちゃんとわたしのほうに傾けられ、恥ずかしくなるほど見つめてくる。話しかければ話しかけるほど、こちらに集中するのがわかるんです。
馬は感情のほとんどを耳で表します。
言葉を発する人間のほうへ耳の穴を向ければちゃんと聞いている、くるくる動いていればほかにも気を取られている、後ろへ傾ければ嫌だな、と思っている……。
いろんな感情を耳で教えてくれます。
でも、馬を知った当初はこれが味気ないなと正直思っていました。
身近な動物はワンコだったので、どうしても感情表現を比べてしまい、馬の感情は犬よりも薄い、とまで思っていた時期もあります。
でも違うんです。
馬は耳だけではありません。嬉しければ目が穏やかになるし、笑うこともある。白目をむくこともある。にらむことだってあるんです。
感情表現はそれだけではありません。
鳴き声、態度、ちゃんと見ていれば、ありとあらゆる方法で馬は感情を伝えてきます。
うちのボスはそんなことはとっくのとうに知っていたし、だからこそ馬とともに生きることを選択したのに、わたしはウマコたちと一緒に暮らすまでそこまでは理解していなかったんです。
今はわかります。馬だけではなくどんな生き物でも、わたしたちと同じように心臓をトクトクと動かし生きているものはすべて、豊かな感情を持っていると。
そして、今の私はくるくる変わるウマコたちの表情が愛おしくてたまりません。
こちらが心を開けば開くほど、新しい表情を見せてくれるウマコたち。言葉がなくてもありのままの心で話しかければちゃんと会話が成立する。
わたしはそんな彼らから、人とのコミュニケーションの取り方も学んでいるような気がしています。
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