夏毛と冬毛でまるで別馬
9月に入ると徐々に夏毛が抜けてきて、ウマコたちは冬支度を始めます。
そして、我が家のウマコたちは冬でも馬具は着せません。
なので冬はみな、モコモコ。
モフモフし放題なのです。
さて、我が家のシルは体高約110センチくらいのポニー。
小さいながら体のバランスが非常によく、太陽の下、体は艷やかにきらめき、長いたてがみを揺らしながら走る姿は立派な馬。
本当に美しい姿だなあと見惚れてしまいます。
ただ、かっこよすぎて子どもたちからは敬遠されがちだったため、前髪をパッツンにして女の子らしさを引き出したのでした。
そんなシルちゃんですが、誰よりも換毛期が早く訪れます。
そして、10月にもなると別馬かと思うほど変貌するのです。
変貌したシルはとてもかわいらしく、長毛でくびれというくびれはなくなり、体はモフモフ。
その姿はまるでふかふかのヌイグルミ。
寝ている後ろ姿はジャージー牛。
あごひげがものすごく伸び、ヤギのよう。
わたしはよく、たてがみの中に手を入れて暖を取っています。
アニメを観ていたら我が家の馬がたくさん登場していました
我が家へやって来る前、ハクには別の名前がついていました。
ただ、ジブリ映画「千と千尋の神隠し』に出てくる「ハク」が好きだったため、どうしてもその名を呼びたかったのです。
なので、心機一転「白力王(ハクリキオウ)」と名付けたのでした。
ちょっと太り気味だったけれども、佐目毛の美しい白馬で、「ハク」と呼ぶにふさわしい風格だったはずでしたが、フロンティアへ来て以降、日に日に風貌が変化していきました。
おっとりマイペースな性格からか、動きはスロー。
鳴き声も「ブーブー」か「ヒョーン」。
鼻の穴をふくらませ、寄り目で首をかしげながらお客さんに近づく様子からは馬っぽさは感じられず、いつしか本名で呼ばれることもなくなり、「ハクちゃん」が定番に。
わたしの最初のイメージでは「ハク」だったんですがね。
さらには本名を知ったお客さんからは名前とのギャップに笑われる始末。
それでもものすごく愛想がよく愛嬌もあるため、毎日お客さんに愛され、なでられニンジンをもらっています。
名前を覚えてもらえそれぞれの性格を知ってもらえる。
そんな個性豊かなウマコたちに囲まれて毎日笑いが耐えないのです(幸せ自慢でした)。
たそがれビバ
親の欲目とはよく言いますが、我が家のビバは美しい。
北海道和種(昔で言う道産子ちゃん)のママとスペインのアンダルシアンのパパを持つハーフくん。
体の小ささはママ似で、ほかはすべてパパに似ているのです。
なので、その姿は小さな貴公子。
胸を張って親ばかを気取れるくらい美しい男の子なんです。
その貴公子くんは、よく牧場の馬小屋でたそがれています。
ほかの子たちがニンジンをもらっている間も、彼は食べ方が少しハードなためもらえる機会が少なく、ハクやシルがもらっているのを見ているうちにふいっとその場を離れ、遠い海を眺め始めるのです。
彼のフォローをするために、我が家では必ずビバ用のおやつを用意して、お客さんからもらえない間ボスかわたしがあげているのですが、海を眺めるビバの横顔があまりにも美しくて、わたしはしばらくの間見惚れてしまいます。
ただ、よ〜く見ると、たいてい口の端にはご飯粒が。
それがまた可愛くて可愛くて。
口端についたご飯を眺めがらこの時間がず〜っと続けばいいのになって願うのです。
牧場はいろんな生き物であふれてる
幼い頃から虫は大の苦手っという世の女子の定説から外れない女子道を歩んできたわたしとしては、東京から富山へ移住するにあたり、日を追うごとに切実な問題になっていったのが虫問題でした。
東京では会ったことのない虫、見たことのない虫、図鑑で遠い昔に見たことのある虫……東京でも知っていたけれども決して会いたくない虫……。
ありとあらゆる虫であふれているのは自然豊かな証拠なのでしょう。
それでも日々恐怖でした。
虫問題については後日振り返りたいと思うのですが、今年の夏の終わりのことでした。
富山の夏はものすごく暑く、春、秋の一般的にいい時期と言われる頃の富山しか知らなかったわたしにとっては移住初年度から洗礼を受けたような気がするほど酷暑だったのです。
そう。富山にはフェーン現象というものが毎年夏にはあり、これがまた経験したことのない暑さなのです。
一言で言えば、息を吸うたびに肺が痛い、といった感じでしょうか。
とにかく暑い。朝刈った草もものの一時間でカリンカリンの乾燥草になるくらい。
なので虫たちもそれは死活問題です。
各々草むらに隠れたり、馬小屋のゴムマットの隙間にもぐりこんで水分を確保したり、生きるためにみな必死です。
朝馬小屋を掃除するたびに日影である馬小屋からワラワラと逃げていく虫たちを見ながら、今日も一日生き延びろよ、と声をかけていたほどです。
そんなある日のことでした。
牧場を歩いていたら曲がった釘が落ちているではないですか。
うちのウマコたちは蹄鉄を履いていません。
ポニーであることと、道産子の血を引いていることから蹄は比較的強いとされ、さらに土と草の上をメインに歩いていることから履かせていないのです。
なので釘を踏んだりしたらもろに生蹄に刺さり大変なことになりかねません。
慌てて拾い上げるとなんということでしょう。
錆びて曲がった釘だと思っていたそれは、干からびたミミズでした。。。
この炎天下の中体中の水分が抜け落ちてしまったのでしょう。
カリンカリンでした。。。
東京を離れ、ウマコたちと生活をするようになり、実にいろいろな生き物の命と向き合う機会が増えました。
わたしはこれを、とてもラッキーな人生だと思えるのです。
どうせ生きるなら、人よりもはるかに多くの喜怒哀楽を感じて生きていきたい。
そう思っていたわたしが今、人間以外の生き物とたくさん触れ合うことで命を感じることができる。
本当に幸せなことだなって思うのです。
馬のフレーメンの意味
馬が上唇をまくり上げ、歯茎と歯をむき出しにするフレーメン。笑ってる顔にも例えられますが、臭覚が刺激された時、とくに牝馬のオシッコなど性的興奮を覚えると馬はよくフレーメンをします。
なので牝馬のフレーメンを見たことがあったかな?というくらいフレーメンは牡馬のイメージが強いです。
ただこのフレーメン。臭覚反応以外にも、痛みや苦痛を感じた時にもするらしいのです。
さて、我が家の場合ですが、ビバはよく、シルがオシッコをしたあとを嗅いではフガフガとフレーメンをしています。
そして、ハクちゃんの場合ですが、実は彼、三頭の中でいちばんよくフレーメンをするのですが、その理由が臭覚以外のことがかなり多いのです。
まずハクはシルに対してオスとしての反応を示さないため彼女のオシッコの匂いを嗅いでも無反応です。
じゃあどういったときにフレーメンをするかというと、お鼻をトントンしたとき。これは意図的にフレーメンの表情をさせたいときにするのですが、ほぼほぼの確率でしてくれます。
ただし、痛みや苦痛の部類には入らないくらいアリンコが足踏みをしているくらいの力なのでなんとなくくすぐったいのでしょう。
そしてお鼻の穴をタオルで拭くときにもフレーメンをします。これはちょっとやめて〜といった感情表現かもしれません。
こういった感じにハクちゃんの場合は、物理的な刺激が加えられた時の方がフレーメン反応は多い気がします。
ただ、先日不可解なことがありました。
ひとつの桶から一杯のかけそばよろしくシルちゃんと仲良く水を一緒に飲んでいた時のことでした。
狭いのが気に食わなかったのでしょう。シルの執拗な押し出しに桶から顔を追い出されてしまったハクが、天を見上げながらフレーメンをしたのです。
顔を噛まれたわけでもないのになにが苦痛だったのでしょうか。
それはシルが美味しそうにお水を飲んでいる間続きました。
きっと心が折れてしまったのでしょう。おつかれハクちゃん。。
いつも読んでいただきありがとうございます。
昨日でブログ開設一周年をおかげさまで迎えることができました。
マンガを描く時間は、ウマコたちとの生活を振り返る大切な作業となっていましたが、今ではそれと同時に、現状を俯瞰して見ることができ、じゃあこれからどうしたらいいんだろうと考えることができる欠かせない時間となりました。
これからもあのコたちと実りある一日一日を過ごせるよう、ブログも続けていきたいと思います。
どうぞこれからもよろしくお願いいたします!
水桶の中にはなにが入ってるのでしょうか
ごくごくたま〜に、宝探しの感覚で飲み水を入れた水桶の中におやつを隠してあげることがあります。
ただのお水だと思ってゴクゴク飲んだと思いきや、「あーニンジンがあったー」と言わんばかりに目を見開きバシャバシャとお水を周囲に巻き散らかし、クチビルを伸ばしながら宝物を探し出す姿が可愛くて、ニンジンやらリンゴやらのかけらを忍ばせるのです。
ところで馬の記憶力は結構いいです。
とくに「イヤだったこと」と「良かったこと」の記憶力には長けています。
なので、宝探しがよほど刺激的だったのか、ただの水桶を差し出しても「当然中に宝物があるよね」とかき回すのです。
そんなときは入れてあげたい気持ちをぐっと抑えて、宝物探しがクセにならないようわたしが我慢をします。
そうでなきゃ毎回宝物がないと責められるのですから。
と言いながら、次はなにを忍ばせようかな、と秘かに胸をときめかせているのでした。
ハクちゃんの反乱
ビバとの関係ばかり気にしていたある日のこと。
営業中、真夏の炎天下から逃げるようにわたしはウマコたちの馬小屋の中へと避難したのでした。
そこはよしずが上に張られているためとても涼しく、人間にとっても避難場所となっていたのです。
その日はハクちゃんの小屋へお邪魔してスマホをいじっていました。
隣の小屋ではビバがうつらうつらと居眠りをし、シルは日向で寝転がりなんとものどかな平日の午後でした。
と思ったら突然背後からハクに小突かれたのです。
おそらく顔をいったん下に下げ、えいやっと鼻筋でわたしの背中を押したのでしょう。
よろけたわたしはその勢いのままビバの顔面に突っ込んでしまい、驚いたビバと超至近距離で見つめ合う羽目になったのでした。
幸いビバは、一瞬驚いたもののすぐに力を抜いてくれましたが、ハクの方を見ると「知らねぇし」といわんばかりの表情で顔をそむけているではないですか。
今年に入り、ビバとの関係性ばかり気にしていたわたしは、ハクのことをただ可愛がり、おそらくだらけた関係性になってしまっていたのでしょう。
遊びで小突いたのではなく、先の行為は自分のパーソナルスペースからわたしを排除するための行為ではないかと思い、以来ハクとの関係性の見直しをはかることにしました。
その方法は単純で、きちんと乗ることです。
愛情は今まで通り注ぐいっぽう、ボスに任せておさぼり気味だったハクへの騎乗を定期的に再開することにしました。
わたしは馬にも人にも上手に怒ることができません。なので、背中を通してメリハリのある関係性を築き直すのが最善だと思ったのです。
この方法があっているのか間違っているのかはわかりませんが、目下ハクちゃんにあーだこーだ話しかけながらの乗馬でリハビリしています(わたしのリハビリでもある)。